こんにちは、ピヨです。
私は営業としてキャリアをスタートし、現在は営業部長として約20年間、現場で「人」と向き合い続けてきました。😊
このブログでは、私が研究している心理学や行動科学の知見をベースに、「営業は根性ではなく、理解で動く」という理念のもと、現場で本当に役立つ思考法や習慣術をお届けしています。
さて、今日のテーマは「チャレンジャーセールスモデル」です。
営業の現場にいると、こんな言葉を耳にしませんか?
「とにかく顧客と仲良くなれ🤝」
「御用聞きを徹底しろ🙏」
もちろん、顧客との良好な関係(リレーションシップ)は重要です。私自身、お客様との関係性に助けられた経験は数え切れません。
ですが、それだけで本当に、今の複雑化したB2B営業で成果を出し続けることができるでしょうか。
私は、長年の経験から「ノー」だと断言します。
特にここ数年、顧客自身も「自社の本当の課題が何なのか分からない…🤔」というケースが激増しています。情報が溢れすぎているからです。
そんな「答え」を持っていない顧客に対し、ただ「何でも仰ってください(御用聞き)」と伝えても、商談は一歩も前に進みませんよね。
この“停滞”を打ち破る鍵🔑こそが、今回ご紹介する「チャレンジャーセールスモデル」なのです。
はじめに:なぜ「仲良し営業」は通用しなくなったのか?🤝
かつての営業は「顧客と仲良くなる」ことが成功への近道とされてきました。いわゆる「リレーションシップ・ビルディング」ですね。
けれど、私たちが対峙している現代のB2B営業の世界では、「仲良し営業」だけでは成果を出せないどころか、むしろ顧客から選ばれなくなってきている。そんな厳しい現実があります。

なぜでしょうか?
それは、現代の顧客が抱える課題があまりにも複雑で、顧客自身がその本質的な問題に気づけていないことが多いからです。
インターネットで情報はいくらでも手に入ります💻。顧客は営業担当者に会う前に、すでにあらゆる情報を調べ尽くしています。
彼らが求めているのは、知っている情報の「おさらい」ではありません。
彼らが本当に求めているのは、
「自分たちでは見つけられなかった視点(インサイト)」であり、
「その複雑な問題を解決まで導いてくれる専門家(パートナー)」なのです。
この変化の時代に、営業担当者をタイプ別に分類し、最も高い成果を上げているのはどのタイプかを徹底的に調査した、非常に有名な書籍があります。
それが、マシュー・ディクソンとブレント・アダムソンによる名著
📘『The Challenger Sale(邦題:チャレンジャー・セールス・モデル)』です。
この調査研究は、驚くべき事実を明らかにしました。
複雑なソリューション営業(B2B営業)において、圧倒的な成果を出していたのは、「御用聞き型」でも「問題解決型」でもなく、「チャレンジャー型」と呼ばれる営業担当者だったのです。
チャレンジャー型営業とは、顧客に安易に迎合しません。
顧客がまだ気づいていない、あるいは直視したくないような「新しい視点(インサイト)」をあえて提示し、議論を巻き起こし、商談を主導するプロフェッショナルです。

「なんだか、強引で難しそう…😨」
「顧客とケンカするみたいで嫌だな…」
そう感じた方もいるかもしれませんね。
私も最初はこのモデルを知った時、少し「強すぎる」のではないかと感じました。
しかし、このモデルの本質を深く研究していくと、それは単なる「強引さ」や「論破」とは全く違うことが分かりました。
チャレンジャーセールスモデルの根底にあるもの。
それこそが、私がこのブログで一貫してお伝えしている「営業心理学」なんです。🧠✨
チャレンジャーは、根性論で顧客を説得しているのではありません。
人間の「思考」や「感情」が動くメカニズムを深く理解し、それに基づいたコミュニケーションで、顧客の“考えを変える”のです。
この記事では、営業歴20年の私が、この「チャレンジャーセールスモデル」を単なる理論としてではなく、「現場でどう使うか?」という視点で徹底的に解剖します。
- モデルの核となる「3つの柱」と、その背後にある「営業心理学」のメカニズム
- 明日から現場で使える、具体的な実践スキルとトーク例
- 国内外の成功事例
これらを、私の経験談も交えながら、分かりやすく解説していきます。
「仲良し営業」から一歩踏み出し、「顧客を導けるパートナー」へと進化したい。そう願うすべての営業担当者にとって、必ずヒントになるはずです。
🔶 1. チャレンジャーセールスモデルの3つの柱と営業心理学
チャレンジャーセールスモデルは、非常にロジカルに組み立てられています。
しかし、私はあえてこう呼びたいと思っています。
「心理学を、営業現場での“行動”にまで落とし込んだフレームワーク」だと。
チャレンジャーが行うことは、大きく分けて3つの柱(行動)で構成されています。
それが、「Teach(指導)」「Tailor(適応)」「Take Control(主導)」です。
そして、これら3つの柱がなぜ強力なのか。
それは、それぞれが人間の根源的な心理法則に基づいているからです。
まずは、この全体像をご覧ください。
私なりに、3つの柱と活用される営業心理学を整理してみました。

| チャレンジャーの柱 | 概要 | 活用される営業心理学 | 心理的効果 |
|---|---|---|---|
| Teach(指導) | 顧客が気づいていない課題や機会を提示し、考え方を変える。 | 認知的不協和 | 顧客の“常識”や“思い込み”を揺さぶり、不快感(不協和)を解消したいという方向へ動機づける。 |
| Take Control(主導) | 商談のプロセス全体をリードし、顧客の迷いを排除する。 | 権威性の法則 | 「専門家」としての信頼と安心感を与え、「この人に任せれば大丈夫だ」という心理を働かせ、意思決定を加速させる。 |
| Tailor(適応) | 顧客の役職や関心事、組織の価値観に合わせて提案内容を調整(翻訳)する。 | 自己一貫性の法則 | 相手の価値観や過去の発言を肯定し、それと矛盾しない提案をすることで、個人的な納得と組織的な合意形成を同時に促す。 |
※注:原著では「Teach, Tailor, Take Control」の順番で紹介されていますが、現場での実践と心理的効果を考えると、私は「Teach → Take Control → Tailor」または「Teach → Tailor → Take Control」のどちらも重要だと考えています。今回は、まず「認知の揺らぶり(Teach)」、次に「主導権(Take Control)」、最後に「合意形成(Tailor)」という流れで解説しますね。
💡1-1. Teach(指導)×「認知的不協和」
チャレンジャーセールスの第一歩であり、最も重要な柱がこの「Teach(指導)」です。
ただし、これは「製品知識を教える」ことではありません。
Teachとは、「顧客自身がまだ認識していない、重要かつ見過ごされている課題や機会を“気づかせる”こと」を指します。
ここで活用されているのが、強力な心理トリガーである「認知的不協和」です。
認知的不協和(Cognitive Dissonance)とは?
社会心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した理論です。
人は、「自分がすでに持っている信念や価値観」と「新しく提示された矛盾する情報」に出会ったとき、心の中に“不快感”や“モヤモヤ”(=不協和)を感じます。
そして、人はその不快感を無意識に解消したいと強く願う生き物なのです。

営業の現場で考えてみましょう。
多くの顧客は、自分たちの現状維持バイアスの中で、何かしらの「思い込み」を持っています。
- 「うちは業界大手だから、今のやり方で問題ない」
- 「コスト削減といえば、まずは人件費か仕入れ値だろう」
- 「SFA(営業支援ツール)を導入すれば、自動的にリードタイム(受注までの期間)は短縮できるはずだ」
こうした顧客の“常識”に対して、リレーションシップ型の営業は「そうですよね」と同意してしまいます。
しかし、チャレンジャーは違います。
あえて、根拠(データ)に基づいた「耳の痛い真実」を提示するのです。

部長、おっしゃる通りSFA導入は重要です。ですが、私たちが分析した業界データによりますと、実はリードタイムの実に65%は、“営業部門と製造部門の間の、社内合意形成の遅れ”が原因だということが分かっています。

部長
えっ…? ツール導入の問題じゃないのか…?(ざわ…)
この瞬間、顧客の頭の中に「自分の考え(ツールが原因)」と「新しい情報(社内合意が原因)」の間に、強烈な“認知的不協和”が生まれます。

部長
え、じゃあ今検討しているSFA導入だけじゃ、問題の半分も解決しないってこと…?
65%も…? 一体どういうことだ?
この“モヤッとした不快感”こそが、顧客の心を動かすエンジンです。
人はこの不協和を解消するために、「新しい情報をくれた営業担当者の話を、もっと詳しく聞かなくてはならない」という心理状態になります。
Teachとは、顧客の常識を心地よく揺さぶり、「あなたの話を聞く理由」を心理的に作り出す、非常に高度な技術なのです。🔥
これが、「仲良し」であることよりも、顧客の「考えを変える」ことの方が重要である理由です。
🎯1-2. Take Control(主導)×「権威性の法則」
さて、Teachによって顧客に「ハッ」と気づきを与え、こちら側に興味を持ってもらうことに成功しました。
次に大事なのが、その商談の主導権を握る「Take Control(主導)」です。
多くの営業担当者、特に真面目で優しい人ほど、ここで「顧客の判断待ち」になってしまいます。
「良いご提案でした。…では、いったん社内で検討します」
「(あぁ、また“検討します”だ…😭)」
チャレンジャーは違います。
彼らは商談のプロセスと、特に「お金(価格)」に関する議論から逃げません。プロとして、自信を持って商談をリードします。
ここで強力に作用するのが、「権威性の法則(ハロー効果)」です。
権威性の法則(Authority Principle)とは?
社会心理学者ロバート・チャルディーニが『影響力の武器』で示した、有名な法則です。
人は、「信頼できる専門家」や「権威ある立場の人」からの指示や提案に対して、無意識に従いやすいという心理傾向があります。
私たちが医師🩺の診断や処方箋を素直に受け入れるのは、この心理が働いているからです。

考えてみてください。
先ほどのTeach(指導)のステップで、あなたは業界データに基づいた鋭いインサイト(気づき)を提供しました。
この時点で、あなたは顧客にとって、単なる「製品の売り子」ではありません。
「自分たちの業界や課題に精通した“専門家”」として認識され始めています。
この「専門家」というポジション(権威性)を確立した上で、次の一手を明確に提示するのです。

部長
なるほど…社内合意の遅れが65%とは衝撃だ。
提案はよく分かった。
…では、いったん社内で検討します。

(ビクッ)…はい、承知いたしました。
ぜひ前向きなご検討を…!
(あとは祈るだけ🙏)

ありがとうございます。ぜひご検討ください。
ただ、部長。その“検討”をしている間にも、
御社の機会損失は1日あたり約〇〇万円(※事前に計算しておく)
のペースで続いてしまいます。
私は、それを放置することの方がリスクだと考えます。
そこでご提案ですが、来週の金曜日に、御社の営業担当のキーマン2名と、製造部門の担当者様1名に、30分だけお時間をいただけませんでしょうか。
まずは“合意形成プロセス診断”を簡易的に実施し、稟議に必要な具体的なデータを一緒に揃えましょう。
このトークの違いが分かりますでしょうか。
チャレンジャーは、顧客の「検討します」という言葉を鵜呑みにせず、「顧客の利益を守るため」にあえて一歩踏み込みます。
これは「強引さ」とは全く違います。
これは、「専門家としての診断と処方箋」なのです。
顧客は、複雑な課題を前にして、実は「どう進めたら良いか分からない」と迷っているケースが非常に多い。
そんな時、自信を持って「次はこれをやりましょう。なぜなら、それがあなたの利益になるからです」と導いてくれる存在(権威)を、本能的に求めているのです。
Take Controlとは、顧客を安心させ、意思決定の迷いを排除するための、「導くリーダーシップ」なのです。💪
💬1-3. Tailor(適応)×「自己一貫性の法則」
Teachで顧客の頭を揺さぶり、Take Controlで商談のハンドルを握る。
そして、その提案を確実に「成約」へと結びつけ、組織全体を動かすために必要なのが、3つ目の柱「Tailor(適応)」です。
Tailorとは、直訳すれば「(洋服を)仕立てる」という意味ですね。
営業においては、「顧客の業界、組織、そして“対面している個人の”価値観や関心事に、メッセージを完璧にフィットさせる」ことを指します。
B2B営業が難しいのは、目の前の担当者一人を説得するだけでは不十分だからです。
その背後には、必ず複数のステークホルダー(決裁者、現場担当者、経理部門、情報システム部門など…)が存在します。
彼らはそれぞれ、全く異なる「悩み」と「関心事」を持っています。
- 経営者: 「全社的なコスト削減と、売上の最大化にどう繋がるのか?📈」
- 現場部長: 「チームの業務効率が上がり、目標達成できるか? 導入の負担は?🤔」
- 現場担当者: 「自分の仕事が面倒にならないか? 使いやすいか?💻」
- 経理部長: 「ROI(投資対効果)は明確か? 本当にその金額の価値があるのか?💰」
ここで、すべての相手に同じ資料、同じセールストークを使っていては、絶対に合意形成はできません。
チャレンジャーは、この「メッセージの翻訳」が非常に巧みです。
そして、このTailorを強力に後押しするのが、「自己一貫性の法則」です。
自己一貫性の法則(Consistency Principle)とは?
これもチャルディーニが提唱した法則です。
人は、「自分自身の過去の言動、信念、価値観」と「現在の行動」を、できるだけ矛盾させたくない(=一貫させたい)と願う心理を持っています。
一度「イエス」と言ったことや、公言した「自分の価値観」を、後から覆すことには強い抵抗を感じるのです。
チャレンジャーは、この心理を巧みに活用します。
商談の早い段階で、相手の「価値観」や「過去の発言(コミットメント)」を引き出しておき、それを提案に組み込むのです。
(例:現場部長へのTailor)

部長が以前おっしゃっていた、『何よりも現場メンバーの納得感を大切にしたい』というお言葉、非常に共感いたしました。
ですので、今回のシステム導入にあっては、一般的なトップダウン導入は採用しません。
まず、現場の営業メンバー自身が改善提案を出せるようなワークショップを設計しています。部長の『現場の納得感』という価値観を、仕組みで実現するご提案です。
(例:経理部長へのTailor)

経理部長が最も重要視されている『投資の透明性』という観点からご説明します。
今回の提案は、単なるコスト削減ではありません。
Teachのパートでお見せした通り、“社内合意の遅れ”という機会損失(1日〇〇万円)を解消する『未来への投資』です。
部長が目指されている『攻めの経理』という方針にも合致すると考えていますが、いかがでしょうか。
このように、Tailorとは、相手の「過去の発言」や「公言している価値観」を引用し、それを“武器”として提案を組み立てる技術です。
相手は、自分の価値観を肯定された上で、「あなたの価値観と、この提案は一致していますよ」と言われると、「自己一貫性の法則」が働き、非常に「ノー」と言いづらくなります。
Teachで揺らした心を、Tailorでその人専用の形に“整える”。
この共感と論理の組み合わせが、B2B営業特有の複雑な社内合意形成を、自然な形で引き寄せるのです。🌱
🧩2. チャレンジャーが身につけるべき実践スキル
ここまで、チャレンジャーセールスモデルの3つの柱と、その背後にある心理学を解説してきました。
「理論は分かった。でも、それを現場でやるには具体的にどんなスキルが必要なの?💦」
そう思われる方も多いでしょう。
もちろんです。これらの行動は、付け焼き刃のテクニックでは実行できません。
日々の地道な鍛錬が必要です。
3つの柱を支えるために、私たちが磨くべき実践スキルを整理してみました。
| 3つのTスキルカテゴリ | 磨くべき実践スキル | スキルを磨くための行動例(私の場合) |
|---|---|---|
| Teach(指導) | 業界・顧客理解力 インサイト発見力 | ・担当業界の専門紙(新聞・Web)を最低2つ毎日読む📰 ・顧客のIR情報、中期経営計画に必ず目を通す ・「なぜ?」を5回繰り返し、顧客の課題の根本原因を仮説立てする |
| データ分析力 | ・自社の過去の失注・成約データを分析し、共通パターンを探す📊 ・公的機関(省庁など)が出している統計データを常にストックしておく | |
| ストーリーテリング力 | ・見つけたインサイトを、製品の話を一切せずに「顧客が主人公の物語」として語る練習をする🗣️ | |
| Tailor(適応) | 組織分析力 (ステークホルダー分析) | ・顧客の組織図(特に力関係)を常に頭の中で描く ・商談相手の「役職」ではなく「ミッション(任務)」は何かを考えるクセをつける |
| メッセージ調整力 | ・提案資料を「経営者向け」「現場向け」など、最低3パターンは用意する(使い回さない) | |
| 内部チャンピオン育成 | ・顧客組織内で、こちらの提案に最も共感し、社内で動いてくれる「協力者(チャンピオン)」を見つけ、その人を徹底的に支援する🤝 | |
| Take Control(主導) | 価値に基づく交渉力 | ・「値引き」の話が出たら、必ず「価値」に戻す訓練をする ・「〇〇円安くして」ではなく「〇〇円の価値を減らして良いか」と考える |
| プロセス明確化 | ・商談の最後には、必ず「次のアクション」と「期限」をこちらから提示し、合意する📅 ・顧客に「宿題」を出させない(例:資料送付で終わり、など) | |
| 建設的な緊張の維持 | ・顧客の言いなりにならず、プロとして「それは違います」と根拠を持って言える勇気を持つ😤 |
これらのスキルは、一朝一夕には身につきません。
ですが、意識して毎日続けることで、確実にあなたの血肉となっていきます。
🗣️ 若手営業マンへ:現場で「3つのT」を使いこなす実践トーク例
私が営業部長として若手社員と接していると、よくこんな相談を受けます。
「お客様に嫌われるのが怖くて、踏み込んだ提案ができません…😥」
「結局、お客様の言いなりになってしまいます…」
その気持ち、痛いほど分かります。
私も若い頃は、「いかに顧客の機嫌を損ねないか」ばかり考えていました。
でも、ある時、厳しいながらも信頼していた上司にこう言われたんです。
「お前は、顧客の“御用聞き”で終わるのか? 医者は患者に耳の痛いことを言うだろう。なぜだ? それが患者の未来のためだからだ。営業は“医者”と同じだ。顧客の未来のために、言うべきことを言え」と。
私は若手の皆さんにいつもこう伝えています。
「顧客は“買う”のではなく、“納得して決める”んだよ」と。
その“納得”を生み出すのが、チャレンジャーの3つのTです。
難しく考えなくて大丈夫です。まずは、こんなふうに実際の商談で使ってみてください。

🎯 Teach(指導)── “気づかせる営業”へ
【よくあるNGトーク👎】

部長、本日は弊社の新製品AIツールのご紹介です。これは資料作成時間を30%削減できる、素晴らしいツールでして…(製品説明から入る)

部長
あぁ、そういうのはよく聞くよ。資料だけ置いといて。」(聞く耳を持たない)
【チャレンジャーのOKトーク 👍】

部長、今日はAIツールのお話の前に、一つお伺いしたいデータがあります。
業界平均で、平均的な営業担当者とトップ営業の“資料作成時間”を比べると、トップの方が20%短いにもかかわらず、成約率”は15%高いというデータがあるのですが、ご存知でしたか?

部長
え? そうなのか…。
てっきりトップ営業は資料作りにも時間をかけているものだとばかり…

はい。実は、彼らは時間を短縮しているのではなく、“時間をかけるべき資料(=勝てる商談)”を正確に見極めているんです。
「御社の課題は、もしかしたら“資料作成の時間”そのものではなく、“どの商談にリソースを集中すべきかの見極め”にあるのではないでしょうか?

部長
(ドキッ…)…ほう、面白い。詳しく聞かせてくれるか?
💬 Tailor(適応)── “自分ごと化”のスイッチを押す
【よくあるNGトーク 👎】

このツールは本当にすごくて、AIが自動で資料を作ってくれるんですよ!
(全員に同じ機能説明)

部長
(ふーん、でも現場は使いこなせないだろうな…)

(現場担当)
(どうせまた新しい仕事を覚えさせられるんだろう…)
【チャレンジャーのOKトーク 👍】

部長に向けて:部長にとっては、チーム全体の成果が最大化されることが最も重要ですよね。
このツールは、先ほどのデータにあった“勝てる商談”をAIが自動でスコアリングします。部長は、その指示を出すだけでよくなります。

現場担当者に向けて:一方で、〇〇さんたち現場の皆さんにとっては、“資料づくりの負担”そのものが課題だと伺っています。
このAIツールは、過去のトップ営業の資料を学習して、たった3分で高品質な提案書のアウトラインを作成できます。
皆さんの負担を減らしつつ、成果も出す。この仕組みは、どちらの悩みも一度に解決できるんです。
【ピヨブログ解説💡】
Tailorとは、突き詰めれば「言葉の翻訳」です。 同じ一つの製品(AIツール)でも、相手の立場(役職、ミッション)に合わせて、
- 部長には「マネジメント(成果最大化)」の言葉で
- 現場には「業務負荷軽減(効率化)」の言葉で
…というように、響くベネフィットを“翻訳”して伝えています。
相手は「あ、これは自分のための提案だ(=自分ごと化)」と感じ、一貫性の法則も相まって、提案を受け入れやすくなります。
💪 Take Control(主導)── “導くリーダー営業”へ
【よくあるNGトーク 👎】

部長
提案は良いと思うよ。でも高いし、まずは資料を社内でよく検討します。

(あ、高いって言われた…)はい、承知いたしました…。
何卒、良いお返事をお待ちしております…。(気弱に引き下がる)
【チャレンジャーのOKトーク 👍】

部長
提案は良いと思うよ。でも高いし、まずは資料を社内でよく検討します。

ありがとうございます。ご評価いただき光栄です。
“高い”というご指摘ですが、失礼ですが、何と比べて高いと感じられましたか?(価格の議論から逃げない)
(顧客の返答を聞いた上で)承知いたしました。
確かに初期投資はかかります。
ただ、「先ほどお話しした通り、現在も“勝てる商談の見極め”ができていないことによる機会損失が、毎月〇〇万円発生しています。」 「率直に申し上げて、このまま“検討”を続けることこそが、最もコスト(=機会損失)がかかっている状態だと、私はプロとして懸念しています。」
「そこでご提案ですが、来週の火曜日に1時間だけ、御社のトップ営業2名の方のお時間をいただけませんか?」 「彼らが実際に使っている資料をAIで分析し、“成功パターン”をその場で見える化してみましょう。まずは費用をかけずに、効果を体感していただくのが一番です。」
【ピヨブログ解説💡】
Take Controlの核心は、「建設的な緊張」を恐れないことです。
NGトークは、顧客の「検討します」という“引き”の言葉に、そのまま引き下がってしまっています。 これでは、商談は99%の確率で自然消滅します。
OKトークでは、
- 「高い」という言葉から逃げず、理由を尋ねる(価格の議論)
- 「検討するコスト(機会損失)」を改めて提示する(Teachの再活用)
- 恐怖(リスク)を煽るだけでなく、「次の一手(無料の分析デモ)」を明確に、日時まで指定して提示する(主導)
強引に契約を迫っているのではありません。 「あなたの会社の利益のために、次のステップに進みましょう」と、専門家として“導いて”いるのです。 この自信に満ちた(ただし根拠のある)姿勢が、顧客に「この人に任せてみよう」という信頼感を与えるのです。
🌟 私からのアドバイス:
若手の皆さんへ。 勇気を出して、顧客の“当たり前”や“先延ばし”に、疑問を投げかけてみてください。
もちろん、無鉄砲に反論しろと言っているのではありません。 大切なのは「根拠(データやロジック)」と「顧客の利益を思う誠実さ」です。
この2つが揃っていれば、たとえ年次が浅くても、あなたは顧客にとって「対等なビジネスパートナー」になれます。

顧客の言いなりになるのではなく、顧客を導く存在になる。
それこそが、チャレンジャーであり、プロフェッショナルな営業だと私は思いますよ。😊
🚀 3. 成功事例:理想論ではない“成果の証拠”
「チャレンジャーセールスモデルがすごいのは分かった。でも、それは海外の話や、一部のスーパースター営業だけの話じゃないの?😥」
そう思われるかもしれません。 しかし、このモデルはすでに世界中の企業で導入され、営業組織全体のパフォーマンスを劇的に向上させたという「成果の証証」が多数報告されています。

✅SAP(グローバル事例)
世界的なビジネスソフトウェア企業であるSAPは、チャレンジャーセールスモデルを全社的に導入したことで有名です。
彼らは、従来の「技術的な機能説明」を中心とした営業(プロダクト営業)から、「顧客のビジネス課題の根本原因を指摘する」営業(インサイト営業)へと、組織全体を変革させました。
その結果は驚くべきものです。
- 成約率:+26% 向上 📈
- 平均売上高:+27% 向上💰
- 営業サイクル(リード~成約):167日 → 126日に短縮 ⏳
(※[1] Challenger Inc. Sales Case Study Software. より)
Teachで顧客の考えを変え、Tailorで各ステークホルダーに響くメッセージを届け、Take Controlで営業サイクルを主導した。 まさに、チャレンジャーモデルが組織全体で機能した証拠と言えます。
🇯🇵伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
「とはいえ、それは海外の事例。日本の“和を以て貴しとなす”文化には合わないのでは?🏯」 私もそう思っていました。
しかし、国内の大手SIerである伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)も、このモデルの導入に成功しています。
CTCは、顧客の言いなりになりがちな「御用聞き営業」から脱却し、「顧客を導く営業」へと進化するために、チャレンジャーモデルのトレーニングを導入しました。
その結果、
- 「7割の営業担当に明らかな行動変化が見られた」
- 「顧客に迎合するのではなく、インサイトを持って商談を主導できるようになった」
といった成果が報告されています。
(※[2] SalesZine「7割の営業担当に明らかな変化」伊藤忠テクノソリューションズのチャレンジャーモデル実践 より)
日本企業であっても、その本質(=顧客理解と心理的アプローチ)を正しく導入すれば、営業文化そのものを変革できる。 この事実は、私たち日本の営業担当者にとって、非常に大きな希望となりますね。🌸
🌈 まとめ:今日から始める“チャレンジャー営業”の第一歩

今回は、B2B営業で最も成果を出すとされる「チャレンジャーセールスモデル」について、その核心である3つの柱と、背後にある営業心理学を解説してきました。
チャレンジャーモデルは、
- 単なる「強引な営業テクニック」ではありません。
- 「根性論」とも全く違います。
それは、「人間理解の技術」であり、顧客心理のメカニズムを深く理解し、顧客の“考えを変える”ための、科学的なコミュニケーション・フレームワークです。
チャレンジャーセールスモデルの3つの柱
- Teach(指導)× 認知的不協和 製品の話ではなく、顧客の常識を覆す「インサイト」を提示し、聞く耳を持たせる。
- Take Control(主導)× 権威性の法則 「検討します」に引き下がらず、専門家として「次の一手」を自信を持って提示し、商談を導く。
- Tailor(適応)× 自己一貫性の法則 相手の役職や価値観に合わせてメッセージを「翻訳」し、組織全体の合意形成を促す。
この記事を読んで、「すごい理論だけど、自分にできるだろうか…」と圧倒されてしまったかもしれません。
大丈夫です。すべてを一度にやろうとしなくて構いません。 まずは、明日からの商談で、このうちどれか一つでも意識して実践してみてください。
私から、今日から始められる「3つの小さな行動」を提案します。
Teachの第一歩: 次回の商談で、製品説明の前に、顧客が「えっ?」と驚くような業界のデータや「耳の痛い真実」を、たった一つだけ提示してみる。
Tailorの第一歩: 提案資料を作るとき、「このメッセージは、相手の部長のミッションに響くだろうか?」と、相手の立場で一度だけ見直してみる。
Take Controlの第一歩: 商談の最後に「検討します」と言われたら、引き下がる前に**「ちなみに、ご検討にあたって懸念されている点は何ですか?」と、勇気を出して一歩だけ**踏み込んでみる。
この3つの「小さな意識」を一つでも持ち込むだけで、あなたの営業は 「説明する人」から「問いかける人」へ、 そして「問いかける人」から「導く人」へと、確実に進化していきます。
私の感想(営業歴20年の現場から)
最後に、営業部長としての私の「感想」であり、皆さんへの「願い」をお伝えさせてください。
私が20年間、この営業という仕事の現場に立ち続けてきて、確信していることがあります。 それは、営業という仕事は、根性ではなく「理解」で動く仕事だということです。
顧客の心理を理解し、顧客の組織を理解し、顧客がまだ気づいていない未来の課題を理解する。 そして、その理解に基づき、顧客の「考え」を変え、より良い未来へと「行動」を促すこと。 それこそが、営業という仕事の本質だと私は信じています。
チャレンジャーセールスモデルは、まさにこの「理解」を実践するための強力な羅針盤です。🧭
- Teachで「ハッ」とさせ、
- Tailorで「なるほど」という納得を生み、
- Take Controlで「この人なら」という信頼を築く。
この流れが自然にできるようになると、不思議なことに、商談は「売る側 vs 買う側」という“勝負”ではなくなります。 それは、同じ課題に向き合うパートナーとしての“共創”に変わっていきます。
営業という仕事は、時に孤独で、結果に追われる日々の中で、自分を見失いそうになることもあります。 私も、数え切れないほど「もう辞めたい」と思った夜がありました。
でも、どうか焦らないでください。
顧客を深く理解しようとする姿勢こそが、あなたの最大の武器です。
商品を売る前に、人を理解する。 それができる営業は、時間がかかったとしても、必ず最後には顧客からの揺るぎない信頼を勝ち取ります。
「上手く話す」ことよりも、「丁寧に聴き、深く理解する」こと。 「売り込む」ことよりも、「根拠を持って、誠実に導く」こと。
その日々の地道な積み重ねが、あなたを“数字だけで語られる営業”から、“人に求められる営業”へと、必ず成長させてくれます。
この記事が、あなたの明日からの営業活動の、小さな一歩を踏み出す勇気になれば、これほど嬉しいことはありません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。😊✨
参考文献 [1] Challenger Inc. (n.d.). Sales Case Study Software. [2] SalesZine (2019). 「7割の営業担当に明らかな変化」伊藤忠テクノソリューションズのチャレンジャーモデル実践.
■ ごあいさつ
こんにちは!「ピヨブログ」管理人のピヨ部長です。
このブログは、「最強の矛(売る力)」と「最強の盾(守る力)」の両方を手に入れるための、営業心理学メディアです。
私は20年以上、リフォーム業界の最前線で「売る側」の人間として生きてきました。 営業部長として、心理学や行動経済学を駆使し、顧客の心を動かす「プロの手口」を熟知しています。
しかし、ある時ふと思いました。 「この強力な心理テクニックを、もし客側が知っていたら?」
このブログでは、現役営業部長である私が、あえて業界の裏側やセールスの手口を**「暴露」**します。
営業マンの方へ: 根性論ではない、科学的に「売れる技術(矛)」を。
一般の方へ: プロの営業トークを見抜き、損をしないための「防衛術(盾)」を。
攻めと守り。この矛盾する二つの武器を使いこなし、あなたの仕事と暮らしを「整える」お手伝いをします。
■ 経歴・実績
現役 営業部長(リフォーム業界歴20年) 数十名の部下を束ね、部門売上6億円を達成。 現在はプレイングマネージャーとして、AI・心理学を活用した「再現性のある営業教育」に従事。
「負」からの逆転 近畿大学 理工学部卒。実家の工務店が多額の借金を抱えて廃業するという原体験を持つ。 「守る知識」がないと搾取される怖さを痛感し、自身の家計防衛と資産形成(親の借金完済→戸建て購入)を達成。
プライベート 40歳、2児(5歳・3歳)の父。 趣味はアガベ・レオパ・3Dプリンター。合理的かつ効率的なライフハックを好む。
■ このブログで発信していること
このブログは、大きく分けて2つの視点で構成されています。
【売る力】営業マン・フリーランス向け
悪用厳禁の営業心理学: 顧客が無意識に「YES」と言ってしまう心理トリガーの解説。
現場の実践トーク: 机上の空論ではない、今日から使えるクロージング技術。
AI×効率化: 忙しい営業職が、AIを使って定時に帰るための仕事術。
【守る力】すべての消費者・パパママ向け
損しない購買心理学: 家電・車・住宅…高額商材の値引き交渉術。
プロの手口の裏読み: 営業マンの「笑顔」や「提案」の裏にある意図を暴露。
騙されないための防衛策: 悪質な契約や、不要なオプションを断るための鉄壁のフレーズ。
■ メッセージ
営業の世界には「知っている側」と「知らない側」の間に、大きな情報の格差があります。
私はその「境界線」に立ちます。
営業マンには「武器」を配り、成果を出して自信を持ってほしい。 そして消費者には「盾」を配り、納得のいく賢い買い物をしてほしい。
「売る力」を知れば、仕事が楽しくなる。 「守る力」を知れば、人生が豊かになる。
ピヨブログを通じて、あなたがこの両方の力を手に入れ、賢くしたたかに生き抜くきっかけになれば嬉しいです。



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